おそらく今回は、頭一つ抜けていた『熱源』と『落日』の一騎打ちになると考えている(この二作に対抗できるのは『噓と正典』だが、これは選考委員の理解の外側にあるので、受賞はないと見る)。そのため悩むのだが、辺野古新基地建設の是非をめぐる県民投票が目前に迫っていた時期に選考が行われた第160回直木賞が、沖縄の現代史を扱った真藤順丈『宝島』になったように、2019年4月、アイヌを先住民族と明記した、いわゆるアイヌ新法が成立したこと考慮するなら、センシティブなアイヌ問題に正面から挑み、ダイナミックな物語を作った川越宗一が有利なように思え、『熱源』を本命とする。昨年、大英博物館で開かれたマンガ展のキービジュアルに、野田サトルの漫画『ゴールデンカムイ』に登場するアイヌの少女アシリパが描かれるなど、少数民族の権利を守り、共生をはかることは世界的な関心事になっており、これも追い風になるように思える。  “珠玉”といえるほど外れがない本書の中でも、表題作「嘘と正典」は出色だ。 文明という理不尽な圧力に立ち向かう熱い人間を描いた『熱源』, 「オール讀物」編集部「<川越宗一インタビュー> 全国の書店員から絶賛の声が! 読者の胸を熱くさせる「強烈な故郷への思い」」.  『スワン』は、マスコミの報道は必ずしも事件の本質を伝えているとは限らないこと、自分たちが作った安易な“物語”を信じて事件関係者を善悪に色分けし、悪を徹底的に叩く現代日本の風潮の是非など、タイムリーな社会問題を突き付けている。それだけに、まったく悪くないいずみたちが社会に蔓延する悪意に追いつめられていく展開は、読者もいつ同じ立場になるか分からないだけに、恐怖が身近に感じられるのではないだろうか。 壮大な物語を読み解く『熱源』ガイド――地図編 -特集(2020.03.02) 第162回直木賞受賞 川越宗一さん受賞のことば -ニュース(2020.02.21) <対談>大島真寿美×川越宗一「先輩作家が直伝! 直木賞受賞直後のリアル」 -インタビューほか(2020.1.28)  その意味で、近代の政治史、文学史、文化史の知識があると、美しい部分だけを強調した川越の歴史観と小説作法には違和感を覚えるし、時代考証と物語の根幹が密接に関係しているだけに、そこを否定的にとらえる選考委員がいたら、ほかの選考委員も同調して評価が下がる危険があるように思えた。, 呉勝浩は、カリスマ的な教育家が小学校での講演中に刺殺され犯人が現行犯逮捕された事件を女性ディレクターが再調査する『道徳の時間』で、第61回江戸川乱歩賞を受賞してデビューした。『道徳の時間』は選考会での評価が分かれ、強硬に受賞に反対する選考委員もいる中での薄氷の受賞となった。呉はこの経験をバネにしたのか、ミステリーの仕掛けと社会的なテーマを融合させた高いクオリティの作品を早いペースで刊行しており、出所した犯罪者や犯罪予備軍との共生は可能なのかを問う『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞している。直木賞は、今回が初ノミネートである。  現在、何か大きな事件が発生すると、マスコミが報じ、ネットで情報が拡散され、被害者や犯人、司法とは別のところで、受け手がそれぞれに物語を作っている。そんな物語では事件の本質は見えないとするミステリーは珍しくないが、『落日』は当事者に近い香と千尋が、クリエイターとして事件と向き合い、あがきながら事件を物語化することの意義を考えており、このテーマに新たな風を送り込んだといえる。湊は、これを香たちの特殊事情とするのではなく、ミステリー作家が殺人事件を書く意味という自身の問題に重ねることで、普遍性の高いテーマに昇華させることに成功した。それだけに読者も、事件の物語化とどのように向き合うべきなのかを、真剣に考えることになるだろう。 第160回の直木賞受賞が戦後の沖縄で戦う人々が描かれた真藤順丈さんの『熱帯』でした。, アイヌの中でも樺太アイヌが題材となっています。樺太は今でも北方領土問題で取り上げられますね。, 時代としては大体日露戦争前から第二次世界大戦が終わるまでが描かれています。その時代に樺太に住むアイヌ民族はどのように生きていたのでしょうか。, 樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。 開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志します。, 一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれました。 ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られます。, 日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。 文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着きます。, 金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作です。, この時代に生きるアイヌの人々が激動の時代を生きていたのが伝わってくる圧巻の作品でした。, 南極探検隊の足跡や金アイヌ語研究の第一人者・金田一京助の姿、そして物語中には大隈重信が登場するなど、その歴史を動かそうとする大きな物語は圧巻です。, 時代の変遷と共にアイヌ種族が滅びるのではないかという心配をヤヨマネクフはずっとしてきました。だからこそアイヌが見直されるきっかけとして南極探検へと志願し、極点まで行けずとも南極に立ちます。, それまでのヤヨマネクフの人生というのは困難の連続です。妻が亡くなり、故郷の樺太へと戻り、そこで生き抜くことはこの激動の時代にあって険しい。, つい、と風が吹き、伯爵の袴がはためいた。ヤヨマネクフも被っていた制帽が飛ばされそうあり、押さえる。, 「お言葉を借りれば、見直される必要なんてなかったんですよ、俺たちは。ただそこで生きているってことに卑下する必要はないし、見直してもらおうってのも卑下と同じだと思いましてね。俺たちは胸を張って生きていればいい。一人の人間だってなかなか死なないんだから、滅びるってこともなかなかない。今はそう思ってます」, 背負っているもの、考えていること、そしてその上での行動力が大きくて、ただ驚いて嘆いて、感動してうまく消化できていない自分はいるのですが、こういった歴史があって今自分たちが生きている時代に繋がっているということを考えると新しい感性が開かれるような気します。, アイヌ種族については勿論、第二の主人公ともいえるブロニスワフの人生もまた激動です。私自身は歴史に詳しくはないのですがそれでも使命を感じる人々の大きく止めることのできない力のようなものを読んでいて感じました。, 今を考えて、これからを考えることも大事ですけど、今までのことは目を背けようとすれば背けられる。だけど、自分の判断基準を養うためにも今までを知ることは大切だと思いました。, 読み終えて考えれば考えるほどさらに考えこんでしまう。そんな重く深みのある小説でした。, ただ読んでいる最中は登場人物の熱い想いや、聞いたことのある歴史上の人物が出てくることもあって先が気になって仕方のない読書でした。, 直木賞の発表も控えて結果も気になるところではありますが、注目を浴びて欲しいと思います。, 社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 川越宗一さんの「熱源」が第162回直木賞を受賞しました!読み出した途端に物語に吸い込まれ、読み終わった時には「熱」を私ももらった気がします。今回は第162回直木賞に輝いた「熱源」のあらすじや内容、ネタバレ、書評そして感想をお伝えします。 第160回直木賞受賞作品! 戦後復興期の沖縄という私達が風化させてはならない歴史と向き合った物語です。 第160回の直木賞候... 村上春樹初期三部作の第二作目! 初期三部作とは村上春樹さんの原点とも言える初期の中・長編作品で、『風の歌を聴け』、『1973年のピンボ …, 本屋大賞ノミネート作品です! 「ひと」との繋がりの良い面、悪い面を通してデリケートな過去を持った主人公の聖輔の日々を描いた物語です。  …, 2014年のミステリー年間ランキングで3冠に輝いたミステリ―短編集! 表題作の人を殺め静かに刑期を終えた妻の本当の動機が浮かび上がる「 ….  『落日』は、パズルのピースのように断片が集まり、意外な絵を浮かび上がらせるプロット重視のミステリーで、何気ない一文が後で重要な伏線になったり、前半に描かれたシーンにまったく別の意味があったことが判明したりと、最後まで先の読めないスリリングな展開が楽しめる。暗い物語なのに、光も垣間見え読後感が悪くないのも嬉しい。  第二部「顔のない目」は、警視庁組織犯罪対策部の植木範和警部補を主人公にしている。所轄の佐古と麻薬の売人らしい森田一樹の行動確認をしていた植木は、森田を尾行して新木場のライブハウスにたどり着く。森田がコインロッカーを利用して麻薬の売買をすると確信した植木は、現場を押さえようとするが、仕掛けられた爆弾が爆発し、森田は即死、植木も重症を負ってしまう。この事件も捜査が難航するが、植木がコンビを組んだ佐古が職務質問をした男が犯人だったと分かる。退院して捜査に復帰した植木が佐古に確かめると、タレコミがあったので職務質問をしたという。  テーマの設定は見事だし、トリックとメッセージ性を巧く融合させたところも評価できる『スワン』だが、映像作品であれば、登場人物のナレーションをバックに再現映像が流れる回想シーンが多く、そこでの人物の動きが複雑なので、ミステリーを読み慣れていないとつらいように思えた。またネットの無責任な書き込みとどのように向き合うべきか、事件報道のあり方、いずみたちの再生の物語など様々なエッセンスが詰め込まれているが、どれも踏み込みが足りず、すべてのテーマが十分に深められていないのも残念だった。, 2002年に『ダークサイド・エンジェル紅鈴 妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞の優秀賞を受賞してデビューした誉田哲也は、2003年に『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞の特別賞を受賞している。今回の直木賞候補者の中では最もキャリアが長く、女性刑事を主人公にした〈姫川玲子〉シリーズや〈ジウ〉シリーズ、剣道に打ち込む対照的な少女2人の成長を描く〈武士道〉シリーズなど、映画化、ドラマ化された人気作を幾つも抱えている誉田だが、直木賞のノミネートは今回が初となる。『背中の蜘蛛』は、誉田が得意とする警察小説である。 直木賞の直木って誰のこと? 名誉ある日本の文学賞・芥川賞直木賞。芥川賞の芥川龍之介は誰もが知っている小説家ですが、直木賞の直木について知っている人は少ないのではないでしょうか。 ここではそんな直木賞と、その由来となった直木三十五が一体誰なのかを徹底解剖!  日本の南方を舞台にした『天地に燦たり』とは一転、『熱源』は、アイヌの口承文学を言語学者の金田一京助、ポーランド人の民族学者ブロニスワフ・ピウスツキらに語り、白瀬矗しらせのぶの南極探検隊にも参加したヤヨマネクフ(日本名・山辺安之助)を軸に、北海道、樺太、ロシアなど極寒の地で繰り広げられる熱いドラマを描いている。  小菅はなぜ事件解決のヒントを知っていたのか、そして佐古に情報提供したのは誰か。この謎を残したまま第三部「蜘蛛の背中」が始まる。本庁に異動し、新木場の爆殺事件を担当することになった本宮は、佐古へのタレコミと、自分かかわった小菅の特命が似ていると気付く。警視庁の怪しい動きを調べる本宮のパートと並行して、社会の底辺で生きる姉弟と知り合ったフリーターの青年が、二人を助けようと奔走する物語が描かれ、これらがどのように結び付くか判然としないまま進むだけに、そのサスペンスは圧倒的だ。 【第162回 芥川龍之介賞】古川真人 好きな作家は窪美澄、伊坂幸太郎、村上春樹と今まで答えていましたが最近は好きな作家が増えて過ぎていて錯乱中です(笑)ジャンルは幅広く読んでいます。.  取材で集めた素材を組み合わせて物語を作り、受け手にメッセージを伝えることの大切さ、それは関係者を傷付けるかもしれないし、間違った真相を導き出すかもしれないという困難とも表裏一体になっている事実をミステリー小説に仕立てた『落日』は、物語をめぐる物語だった前回の直木賞受賞作、大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓魂結び』との共通点も少なくない。選考委員が前回とほぼ変わっていないだけに、同じように評価されるかもしれないが、反対に似た傾向の作品の連続受賞は避けたいとの意見が出る危険もある。, 以上を踏まえ、第162回直木賞を予想してみたい。

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